MSレポート NO.8

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ここでいう品質マネジメントシステム(QMS)とはISO9001:2000版に基づいています。

車庫新築・・・工事が終えてから気づいた「設計の間違い」
車庫昨年夏、新しい車庫を建てることに決めたAさん。幾つかの建設会社・工務店に打診をし、何度か商談を重ねた結果、近所のB建設会社に車庫の建築を依頼しました。
B建設の担当者との打ち合せの中で、Aさんが出した最も重要なポイントは、「車とは別に除雪機用の出入り口を作って欲しい」ということ。除雪機は普通の2枚戸の引き戸では通れない幅なので、1枚戸にして、通れるようにして欲しいと希望したそうです。
工事が始まり、順調に進んでいるかに見えたある日、Aさんは除雪機用の出入り口に引き戸が2枚取り付けられていることに気づき、愕然とします。「あれほど1枚戸にしてほしいと頼んだのに・・・。」
結局、Aさんの要望に合わせてもらうため、追加料金なしで、変更してもらったそうですが、完成は予定よりだいぶ遅れたそうです。

今回の事例は、周囲にも似たような経験をした人が案外多いことがわかりました。「言ったはずなのに、伝わっていなかった・・・」「できたものが、自分の仕上がりイメージと違った!」など、お客様の要望がきちんと伝わらないケースが多いようです。
そこで今回は、「どうすればお客様の要望を正確にカタチにできるのか」を、建設会社の「品質マネジメントシステム」の視点から考えたいと思います。

※「品質マネジメントシステム」(QMS)とは、「お客様に満足・感動・安心・信頼していただくために、きちんと仕事をする」という前提のもと、そのためのしくみや手順、ルールを決めたものです。「品質マネジメントシステム」には、業種を超えた共通の、事故・トラブルを未然に防ぐヒント(要求事項)があります。
以下、 は、その「品質マネジメントシステム」が示している要求事項の意訳です。

最初に窓口担当者は、新築する建物についてのお客様の希望や条件などを聞きます。もし、お客様の要望が抽象的であいまいな場合でも、最低決めなくてはいけない項目に沿って、明確にします。特にお客様の要望は文書にする必要があるでしょう。
製品に関する要求事項の明確化
組織は、お客様が規定した要求事項を明確にすること。

お客様の要望を担当に伝え、施工図を作成します。完成したら、契約を交わす前に、必ずお客様と確認します。このとき、「使用する材料の入手は可能か」「工期に十分、間に合う施工体制が整っているか」などを事前に社内で確認しておくことはいうまでもありません。
今回の場合であれば、Aさんの「車とは別に除雪機用の出入り口を作ってほしい」「その除雪機は幅が広いので、1枚戸にして通れるようにして欲しい」という要望がありました。この希望を反映させて作成した施工図を、工事に入る前にAさんに内容を確認していれば、「間違い」に気づいたかもしれません。

製品に関連する要求事項の見直し
組織は、製品に求められる要求事項が定められているか、またその要求事項を実現できる能力を持っているかを見直すこと。その見直しは、お客様と契約する前に実施すること。

各担当に施工図を渡し、工事に入ります。このとき、各担当に受注に関する情報(施工図、見積書、スケージュール等)を確実に伝えます。今回であれば、窓口担当者は「除雪機用の出入り口は1枚戸」ということを知っているわけですから、この点をしっかり伝える必要があったのでしょう。もしかして、お客様の要望を文書に残していなかったために伝えられなかったのかもしれません。
組織内での情報交換
組織内で必要な情報(製品の品質に影響する情報)を確実に伝えるための機会(打ち合わせ、会議)や方法(電話、ネットワークなど)、ルールなどの仕組みを作ること。

次に、工事が始まってからお客様に工事の進捗などを伝えます。
今回であれば、工事途中に進捗や内容をお客様に伝えていれば、もしかして、もっと早い時期に「間違い」に気づいたかもしれません。

お客様とのコミュニケーション
組織は、お客様と情報のやり取りをする内容や方法を明確にすること。情報とは例えば、製品情報、契約内容やその変更、またお客様からの反響(クレーム、アンケートなど)。

QMSは「間違い」を事前に発見する仕組み
今回のレポートは、「そんなこと当たり前!」と思われることばかりですが、それができていなかったことがトラブルの原因のように思います。もちろん、誰だって勘違いやミスはあります。でも引き渡し直前まで、だれも「間違い」に気づけなかったのは、工事担当者だけの責任ではないと考えます。
今回、受注から引き渡しまでの間、「間違い」に気づくチャンスが何度かありました。もし、「仕事の仕組み」が構築されていて「当たり前」のことを確実に実行していたなら、どこかの工程で「間違い」に気づくことができたように思います。
QMSは、人の記憶に頼ったり、人に任せきりにならないための「仕事の仕組み」でもあります。人は間違うこともありますが、それを発見するための仕組みがQMSにあると私は考えます。
その後Aさんは、今回のことで「B建設会社には、もう仕事は依頼しない」と言っていました。B建設会社は、そのような仕事の仕組みができていなかったために、損失が発生しただけでなく、リピート顧客を失うことになってしまいました。

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