MSレポート NO.9

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ここでいう品質マネジメントシステム(QMS)とはISO9001:2000版に基づいています。

高級魚「クエ」を別の魚で6年間販売していた日本料理店
高級魚偽装今年の3月、九州のある日本料理店が販売した高級魚アラ(一般名:クエ)の鍋物セットの中身が、アブラボウズという別の魚だったということがわかり、同社は県から日本農林規格(JAS)法の加工食品品質表示基準違反で、口頭指導を受けました。
対象の商品は、2002年から販売していた「アラ(クエ)しゃぶセット(3人前)」(約1万5000円)など。消費者からの指摘で誤りに気づき、今年1月からはこの商品の販売を中止していました。同社社長は1月、魚種を確認するために仕入先の宮城県に出向き、現地の漁師らが「クエ」「沖ネウ」など複数の名で呼ぶ魚がアブラボウズだと分かったとのこと。
なお、水産庁が2003年に出した「魚介類の名称のガイドライン」では、地方名が理解される圏域外に出荷する場合、「標準和名の併記」を求めています。仮に「クエ」が東北の地方名であっても、同社は原材料表示に標準和名(アブラボウズ)を併記しておらず、問題があったことになります。
ちなみに、仕入先が発行した魚種証明書には「クエ」のみの表記で、「クエ(アブラボウズ)」という表記ではなかったそうです。
(2008年3月19日新聞記事より)

今回の事例はたとえ故意ではなかったにせよ、私たち消費者の立場からいえば「騙された」という印象が残ります。また、販売している「クエ」を「アブラボウズ」と知らずに6年間も販売していたことに驚いているのは私だけでしょうか。
そこで今回は、「なぜ、仕入れている魚が違うことに気づけなかったのか」「なぜ、国のガイドラインに沿った表記がされなかったのか」について、日本料理店のQMSから考えてみたいと思います。

※「品質マネジメントシステム」(QMS)とは、「お客様に満足・感動・安心・信頼していただくために、きちんと仕事をする」という前提のもと、そのためのしくみや手順、ルールを決めたものです。「品質マネジメントシステム」には、業種を超えた共通の、事故・トラブルを未然に防ぐヒント(要求事項)があります。
以下、 は、その「品質マネジメントシステム」が示している要求事項の意訳です。

新商品を企画するとき、まず企画を実現するために不可欠な項目について関連情報を収集・整理することになります。そして、これらの情報をもとに、新しい商品の企画を立てます。
今回のような食品の場合は、食材に関する正確な情報や関係する法令の情報を収集する必要があると思います。また、商品の中心である「クエ」は高級食材。使用する魚が本物か否かを調べた上で、仕入れ先も含めた企画を立てる必要があったように思います。

新商品販売企画と情報収集・整理
新商品の販売企画を立てる前に、考慮しなければいけない情報を明確にする。ただし、これらの情報については、その適切性を見直し・確認をすること。収集・整理した情報を必要条件として、新商品の販売企画を立てる。企画の内容には、必要な材料、仕入先について適切な情報を含む。

企画がまとまったら、販売を開始する前に、関係する部門の担当者で、内容について問題がないかを点検します。例えば、求めていた通りの商品ができるかどうか、お客様に商品を確実に提供できるかどうかなどについて検証する必要があるでしょう。今回の場合であれば、仕入・調理担当など商品に関わる担当者全員で、試作品で検証(食味)をすることになります。そのとき、「アブラボウズは脂質が多い」ことから、この段階でその違いに気づけたように思います。
新商品販売企画の妥当性確認
企画した通りの商品ができ、販売できるかどうかを確認すること。
妥当性確認は販売が開始される前に完了すること。

仕入についても、どの会社から仕入れるのかを決めるための評価・選定する基準を決めて管理します。今回の場合は、メインの食材「クエ」を仕入れるのですから、慎重に仕入れ先を決めることはもちろん、販売が始まっても、定期的に評価するなど、継続的に管理する必要があったように思います。
取引業者(購買・仕入先)の評価/選定
組織は、取引業者の実力を評価し、評価結果を元に依頼する取引業者を選定すること。また定期的あるいはトラブル発生時など、必要に応じて取引業者を再評価すること。取引業者の選定/評価/再評価の、方法と基準を定めること。

商品を販売開始した後も、内容について検証する必要があります。販売開始した当時と状況が変わっていたり、適用される法令が改正になる場合などがあるからです。そこで、商品に関係する業界の情報を入手する仕組みを決めることが重要になってきます。
今回の場合であれば、販売開始後、水産庁が「魚介類の名称のガイドライン」を出していました。この情報に基づいて、「今の表記は地方名かどうか」を確認していれば、仕入れている魚が「アブラボウズ」だということに気づけたのかもしれません。

製品に関連する要求事項の検証・見直し
組織は、製品に関連する要求事項を検証・見直しをすること。・契約又は注文の要求事項が以前に提示されたものと異なる場合には、それについて解決されている。

「知らなかった」ことの罪の大きさ
今回、現地の魚市場側は2004年から証明書の表記を「クエ(アブラボウズ)」に変更していたにも関わらず、仕入先はその後も「クエ」とだけ書かれた古い証明書をコピーして、日本料理店に発行していたそうです。そのため、同社社長は「アブラボウズとは知らず6年間販売していた」と主張していました。しかし、「知らなかった」ということで許されことはなく、結果として商品の販売停止や会社の信用失墜という制裁を受けることになりました。「知らないで犯す過ち」の罪の重大さを改めて感じます。
また最近は、食品の安全・安心という観点で消費者の考え方・見方が厳しくなっています。ますます企業の法令遵守(コンプライアンス)に関わる仕組みの必要性・重要性を感じた事例でした。

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