MSレポート NO.13

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ここでいう労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)とはOHSAS18001:2007版に基づいています。

屋上授業で天窓破れ、男児が転落死
学校6月18日午前9時25分ごろ、S小学校で、3階屋上にある半球状の天窓を破って小学6年の男子生徒(12)が約12メートル下の1階に転落、全身を強く打ち搬送先の病院で約3時間後に死亡した。警視庁S署は、学校側の安全管理に問題があった可能性もあるとみて、関係者から事情を聴き、事故の詳しい状況を調べている。
警察署や区によると、天窓は強化プラスチック製で直径約1.3メートル、厚さ約4ミリ。天窓の内側には厚さ約7ミリの板ガラスが張ってあった。天窓の下は吹き抜けになっており、男子生徒は一階のじゅうたん張りの床まで落下、当初は意識があったという。
男子生徒は一時間目の算数で歩幅を測る体験学習のため、ほかの児童と共に屋上に行き、教室に戻る途中で天窓に乗って転落した。屋上の出入り口付近には引率の女性教諭(49)がいたが、転落の瞬間は目撃していなかった。6年生の教室は3階にあり、教室に近いことから授業で屋上を使っていた。屋上は普段、施錠されていた。天窓の最後の点検は2006年10月で、目視だったという。
[2008年06月18日 新聞記事より一部抜粋]

事故後、同小学校長は記者会見で「どこよりも安全でなければならない学校で事故が起きてしまい、深くお詫びします。」と話す一方で、「指導していた教諭は、子供が(天窓の)上に乗って落ちるという危険性は予見できなかったと思う。」と話していました。
そこで今回は、施設内で起こりうる事故を予測し、事故が起きないようにするためにはどうしたらいいのかを、S小学校の「労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)」の視点から考えてみたいと思います。

※労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)とは
OHSMSとは、Occupational Health & Safety Management Systemの略で、労働者が安全で衛生的な環境で働くことができるよう配慮することを組織に求めるマネジメントシステム規格の総称です。
これまでの「安全第一」「災害ゼロ活動」など、現場で働く人への意識付けに重点を置いた活動から、重大事故につながる危険源をつぶすという「リスク管理」という視点で、職場のリスクを受け入れ可能なレベルに低減するよう管理するための仕組みがOHSMSです。以下、ohsmsは、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格であるOHSAS18001の要求事項の意訳です。

組織は、事故を未然に防ぐために、まず職場や施設の中で、従業員とそこに出入りするすべての人に対して、命や身体、精神に関わる危険が潜んでいそうな施設・設備(エスカレーター、自動ドアなど)や状況(大勢の人が集まる、過度なストレスなど)を抽出します。(=危険源)
そして、それらの危険源に対して、事故につながるものには何があるのかを明確にします。例えば、どのような事故が、どのような状況・タイミングで起きてしまうのかを調べます。
今回の場合であれば、すべての学校活動の中で、子供たちの行動を予測しながら、危険と思われる場所や危険箇所を洗い出します。例えば、通常は鍵をかけている屋上も、時々授業で使うことがあるので、危険な場所として抽出されるでしょう。さらに、屋上で事故が起きるとしたら、どのようなことが事故につながるのかを調べます。例えば、屋上にあるガラス張りの天窓について、「もし、天窓に子供が乗ったらどうなるのだろうか」という状況が挙げられるのではないでしょうか。

次に、組織は、抽出した危険源に対して、事故につながるものは、どのくらいの可能性で、どれだけ重大な事故に結びつくかという危険性(リスク)を明確にして、その結果リスクの大きいものについては低減させるための対策を決めて、実施します。
今回の場合であれば、まず「天窓」の仕様を調べます。メーカーによると、ドーム型天窓は「人が上に乗ることは想定されておらず、子供の体重でも支えられない」とのこと。このことを知れば、落ちた時の事故の大きさに気づき、子供が上に乗らないようにするために、柵を設置するなどの対策が実施されたのではないでしょうか。

ohsms危険源の抽出・リスクの評価・リスク低減策の決定・実施
組織は次の①~③に関する実施方法を決め、実行しなければならない。①危険源の抽出②リスクの評価と危険源の選定③リスク低減策の検討とその効果確認※なお抽出する範囲は、組織の全活動、職場に出入りする全ての人、職場の全設備を対象とする。

学校組織は、事故を未然に防ぐために、組織に関わる内外のすべての人に対して、危険に関する情報を周知させる方法を決めて実行します。例えば、その日にやる作業についての危険源を確認し合うKY(危険予知)ミーティングも一つの方法です。
学校であれば、翌日の授業に関する打ち合わせ時に危険性について確認し合うこともできるのではないでしょうか。そうすれば、今回のように担任の教諭も、天窓の危険性を認識した上で授業を行い、子供たちにも注意喚起を促すことができたのではないかと思います。

ohsmsコミュニケーション
組織は、危険源及び労働安全衛生マネジメントシステムに関して次の事項にかかわる手順を確立し、実施し、維持すること。・組織の種々の階層及び部門間での内部コミュニケーション ・請負者及び職場への訪問者とのコミュニケーション ・外部の利害関係者からの関連するコミュニケーションについて受け付け、文書化し、対応する。

 学校も“リスクアセスメント”を
教育委員会によると、学校の建物は建築基準法に基づく点検が3年に1度義務づけられており、同校も2006年の点検で天窓をチェックしましたが、ひびや傷などの異常は見つからなかったといいます。また、子供が上に乗ることは予測していなかったため、「天窓に上がらないように」などの指導はしていなかったそうです。
ドーム型天窓は、電気代の節約になるうえ、柔らかい光が室内の雰囲気づくりにも役立つことから、1980年代から校舎や体育館用として用いられるようになったといいます。ですが、それに伴い児童・生徒の転落事故が10年間で少なくとも6件は起きているとのこと。(6月19日新聞記事より)その事実からも、施設の外観検査以外に“危険予知”の観点での調査や対策も必要だったのではないかと考えます。つまり、校舎の危険源を抽出して、事故につながる状況を想定し、その事故の大きさに見合った対策を考え、実施すること(=リスクアセスメント)が、学校にも求められるのではないでしょうか。
建設業などの危険作業が伴う現場では、KYミーティングやリスクアセスメントが当然のことのように行われています。サービス業や公共施設でも、その必要性を強く感じる出来事でした。

参考)6月11日、危険個所を事前に把握し、対応策をまとめた安全計画の策定を学校に義務付ける「改正学校保健法」(学校安全保健法に改称)が成立しました。

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