MSレポート NO.14

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ここでいう品質マネジメントシステム(QMS)とはISO9001:2000版に基づいています。

イベント会場で、エスカレーターが停止し逆走 10人軽傷
今年の8月、東京のイベント会場で、1階から4階に向かう上りエスカレーター(約30メートル)が突然停止し、逆走した。乗っていた約120人の一部が転倒し、男女10人が軽傷を負い、病院で手当てを受けた。
警視庁の調べによると、開場と同時に約120人の来場者が警備員の先導で次々にエスカレーターに乗り始め、先頭が3階付近まで達したときに突然停止したという。当日は、フィギュアの展示・販売イベントが開かれ、多くの人々でにぎわっていた。
なお、事故後の調査で、イベント主催者側が乗り入れ制限をせずに乗客が殺到して、過重量となったことが事故原因とみられることが分かった。事故を起こしたエスカレーターは、建築基準法上の「2段で体重65キロの大人3人が乗る許容基準以上」で設計。その後の調査で、施設側はその基準を認識し、イベントの主催者に「2人と1人を交互に乗せるように促した」と説明したと主張。だが主催者は「説明がなかった」としている。実際に乗り入れ制限は行なわれなかった。なお、主催者から警備発注を受けた警備会社は、改めて報道機関に「指示はなく、重量制限を把握していなかった」と回答した。(8月3日・8日付新聞記事より抜粋)

今回の事故は、エレベーターの乗り入れ制限をしなかったことが事故の原因と言われています。しかし重量制限については施設側、主催者、警備会社の間で「言った」「聞いていない」という報道もあるようです。
今回は現場で警備を担当していた警備会社の「品質マネジメントシステム」(QMS)の視点から考えてみたいと思います。

※「品質マネジメントシステム」(QMS)とは、「お客様に満足・感動・安心・信頼していただくために、きちんと仕事をする」という前提のもと、そのためのしくみや手順、ルールを決めたものです。「品質マネジメントシステム」には、業種を超えた共通の、事故・トラブルを未然に防ぐヒント(要求事項)があります。
以下、 は、その「品質マネジメントシステム」が示している要求事項の意訳です。

組織が、お客様から新たなサービスの依頼を受けた際は、まず「従来から行なっているサービスの内容で十分対応できるかどうか」を確認する必要があります。お客様の状況や条件によっては、従来のサービス内容を変更した方が良い場合もあるからです。
今回の場合であれば、警備を専門とする会社ですから、道路工事中の交通誘導や現金輸送、雑踏整理など、警備対象や目的に応じた警備方法は決まっていたと思います。しかし、依頼されたイベントの警備が、従来の警備方法で対応可能かどうかについて、イベントの規模や来場者の年齢層・性別等を考慮した上で、再度検討することも必要です。
ちなみに、今回のイベントは毎回多くの人が参加する主催者恒例のイベント。事実、当日は徹夜組約1500人を含め約1万人が午前10時の開場を待っていたということですから、混乱が予測されます。やはり従来とは違う新たな警備方法を計画する必要があったように思います。

サービス実現の計画
組織は、サービス実現のために必要な業務内容を計画して、管理の仕組みを構築すること。

次に新たにサービスを計画する場合は、 サービスの具体的な内容について、お客様と約束したことや目的とするサービスの品質レベルを決めてから、それらを実現するためには、何を実施しなければいけないのか、何が必要なのかを明確にします。
今回の場合であれば、まず警備の目的を明確にする必要があるのでしょう。「大勢の人が殺到するかもしれない」ということが分かっているわけですから、やはり目的は「安全第一の警備」と「来場者がスムーズに移動できるような誘導」といえるのではないでしょうか。次に具体的な警備方法を決めますが、事故が起きそうな危ない箇所をあらかじめ明確にしてから、警備方法を決める必要があります。その際に、乗り物や自動で作動する設備に対しては特に事故が起きないような警備方法を考える必要があると思います。このときに、重量制限や人数制限を把握できていれば、安全を最優先にしたエスカレーターへの誘導方法が具体的に決められたのではないかと思います。

サービス実現の計画
サービス実現のための計画には次の中で必要なものを決めること。①サービスの内容や顧客の要求していることについて目標とする品質レベル②サービスの方法、使用する用具や設備、必要な要員他
サービスに関連する要求事項の明確化
組織は、顧客との約束はないが、当然しなければならないことを明確にすること。

仕事の目的は?
今回、事故の状況から推測すると、警備員は「来場者をいかにスムーズに誘導するか」ということへ意識が向いており、「来場者の安全への配慮」が欠けていたように感じます。
警備の一番の目的は、やはり“来場者の安全”です。従ってエスカレーターの重量制限を把握したうえで、誘導することは当然のように思いますが、今回は把握していなかったとのこと。しかし、そのことは主催者の指示がある・ないに関わりなく、警備本来の目的が明確であれば、重要なポイントだったように思います。つまり、警備目的を実現するための手段を確立しないまま当日を迎えたことが、事故に繋がってしまったのではないでしょうか。
サービスの品質を一定に保ち、お客様の満足を得るためには、仕事の依頼を受けた時、「従来のやり方でいいか」と一度立ち止まって考えることは大切な視点だと思います。最悪の事態を招かないためにも、「いつもと同じでいい」と安易に決めず、仕事の目的・手段を確認することが重要であると、改めて再認識した事例でした。

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