MSレポート NO.16

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ここでいう労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)とはOHSAS18001:2007版に基づいています。

個室ビデオ店火災―排煙の窓塞ぐ 店舗管理者らの責任も捜査
今年の10月1日未明、O市にある雑居ビル1階の個室ビデオ店で16人が死亡、9人が重軽傷を負う火災が起きた。捜査本部は、火元の個室を使用していた男を、殺人と殺人未遂、現住建造物等放火の疑いで逮捕した。
調べでは、同店には1階約220平方メートルの店内に個室が32室設置され、出口とは1本の通路で結ばれていた。出口は北側で、南側は排気設備が不十分な袋小路だった。ビル本来の1階部分には幅約1メートル、高さ約40センチの窓が少なくとも3カ所あったが、同店が開業する際の改装で石膏ボードなどによって塞がれていたことがわかった。また、店内には当時、客26人と店員3人がいたが、店員は初期消火活動や避難誘導もしていなかったという。その後、同月28日に行われたO市の立ち入り調査では、排煙設備と非常用照明設備で建築基準法違反が見つかったという。[2008年10月3・28日 新聞記事より抜粋]

捜査本部では、煙が短時間で各個室を襲い、煙を逃す排煙設備が不十分だったことが16人死亡という大惨事につながった可能性があると判断しているそうです。火災の直接の原因が放火だったことは大変不幸なことだとは思いますが、店舗管理者として、どうすれば被害を最小限に押さえられたのでしょうか。
今回は、個室ビデオ店の「労働安全衛生マネジメントシステム」(OHSMS)の視点から考えてみたいと思います。

※労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)とは
OHSMSとは、Occupational Health & Safety Management Systemの略で、労働者が安全で衛生的な環境で働くことができるよう配慮することを組織に求めるマネジメントシステム規格の総称です。
これまでの「安全第一」「災害ゼロ活動」など、現場で働く人への意識付けに重点を置いた活動から、重大事故につながる危険源をつぶすという「リスク管理」という視点で、職場のリスクを受け入れ可能なレベルに低減するよう管理するための仕組みがOHSMSです。以下、ohsmsは、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格であるOHSAS18001の要求事項の意訳です。

火災不特定多数のお客様が利用される施設や店舗では、「火災発生」は忘れてはならない最も重要なリスクです。ですから、万が一火災が発生しても被害が大きくならないように店舗の構造や内装など、該当する法令を守り、設備等を整える必要があります。
今回の場合であれば、賃貸ビルを借りての営業のようですから、店舗用に改装する時、まずは建築基準法に従って、排煙設備・防炎壁・非常用照明などの規制を守った設計をしなければいけなかったのではないでしょうか。

ohsms危険源の特定、リスクアセスメント、管理策の決定
組織は、危険源を継続的にリストアップし、被害の大きさなどの重要度に応じて管理すべき危険源を決め、管理策を決めること。このとき次の点を考慮すること。①組織または他者から提供されている施設・設備・機器 ②適用される法的義務、など。なお、危険源を特定し管理策を決めるのは、事後活動でなく予防活動が確実であるようにすること。

火災2組織は、火災が発生した時、その施設(店舗)で働くすべての人が、初期消火活動や避難誘導ができるような社内教育をする必要があります。
それは雇用形態(正社員、パート、アルバイト)に関係なく、すべての従業員を対象にしなければいけません。
今回の場合であれば、店舗で働くすべての従業員が、緊急事態が発生した際、お客様に対して責任と自覚を持って行動できるように、日頃から教育が必要だったと思われます。

ohsms力量、教育訓練及び自覚
組織は、安全に影響を及ぼす恐れのある作業を行う組織の管理下にあるすべての人が、適切な教育、訓練又は経験に基づく力量をもつことを確実にすること。なお、誰に、どのような教育を行うかを明確にすること。例:組織内のルールに関すること、緊急事態への準備及び対応の手順、役割及び責任並びに重要性など。

また組織は、緊急事態発生を想定し、できるだけ予防または被害を最小にする対応策や手順を決めておく必要があります。また、その手順に基づく訓練などを定期的に実施し、手順についても見直す必要があります。
今回の場合であれば、緊急事態発生時に従業員がとらなければならない行動を「緊急事態マニュアル」などで明確にして、実際に訓練等も実施していれば、適切な行動がとれたのではないでしょうか。

ohsms緊急事態への準備及び対応
組織は、緊急事態の可能性を特定し、対応策を決めること。このとき、関係する利害関係者(救急サービス、近隣者等)を考慮すること。また可能であれば緊急事態に対応するための手順について定期テストを実施し、必要であれば見直し改訂すること。

「安全」はあたり前!
大変な大惨事が起きてしまいました。亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈りいたします。
今回の事故は、顧客の立場からすれば「そんな当たり前なこともしていなかったの?」と、信じられない心境です。特に火災は、天災・人災・機能災害など様々なことが原因で、どんな施設でも起こりうる災害です。ですから、法令を守った店舗設計にすることはもちろん、お客様や従業員、近隣者などすべての関係者が被害に遭わないための対策を決めて実行することは当然のことと思います。
なお事故後、同店の系列店舗の立ち入り調査から、建築基準法違反が一部みつかったとのことからも、店舗管理者の責任は大きいと感じています。
以前MSレポートで取り上げた下記の事故では、いずれも管理者の責任が問われています。管理者は目先の顧客満足向上だけに捉われず、死亡事故などの重大事故を起こさないための「リスク管理」は忘れてはいけない視点と考えます。顧客にとって「安全」は当然の要求なのですから。

MSレポートで取り上げたトラブル・その後
【MSレポート NO.1】
2007年5月、ジェットコースターの車軸が折れて脱線し、乗客の女性が亡くなった事故を起こした遊園地が、先日、民事再生法の適用を申請し、事実上倒産したと発表がありました。(2008年10月29日付新聞記事より)
【MSレポート NO.4】
女性専用温泉施設が爆発し、従業員3人が亡くなった事故で、警視庁は設計ミスで地下の機械室にガスが充満したのが爆発の原因と特定し、運営側の取締役と施工を担当した建設会社の設計担当者を書類送検する方針を固めたと発表しました。(2008年11月4日付新聞記事より)

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